Влади́мир Никола́евич Ло́сский「キリスト敎東方の神祕思想」1957
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伝統的イコンにおいては、画かれる人物・動物・事物は、全て神の光に照らされ安らぎにみち秩序をたもった姿で画かれ、天上界における本来の姿に従って「抽象的」に画かれる。イコンの光は神の光を象徴している。従ってイコンにおいて光は影を作らず、イコン画家が「光」という場合、イコンの背景を示す。また伝統的イコンにおいては遠近法の消失点は分割したり限定したりする不純な空間のしるしに過ぎないと捉えられ、遠近法は逆にされることが多い。遠近法の線は光に包まれたまま神の光栄から光栄へと広がっていると捉えられる。
このような伝統的イコンのあり方に対し、西欧の影響を受けたイコン画家達には「目で見える通りに画く」「人体の細部を忠実に描写して肉体の美に注意を払う」という共通した特徴があった。彼らはビザンティン・イコンにおける厳粛さ、引き締まった表情、この世を離れたものの表現を「矯正」し、写実的になるように「改善」を試みたとされる。
しかし西欧芸術・「西欧化されたイコン」は3次元を捉えて「自然に」画くが、正教会のイコンは3次元的ではないのであり、西欧芸術はこの世を映し出して鏡を見せるかのように提示するが、正教会の伝統的イコンはこの世の背後にあるものを画いて提示すると指摘される。
否定の道
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